臨床神経学

短報

Finger drop variantの臨床像を呈したギラン・バレー症候群の1例

藤井 勇基1), 神林 隆道1)* , 小林 俊輔1), 内堀 歩2), 千葉 厚郎2), 園生 雅弘1)

Corresponding author: 帝京大学医学部脳神経内科〔〒173-8605 東京都板橋区加賀2-11-1〕
1) 帝京大学医学部脳神経内科
2) 杏林大学医学部脳神経内科

症例は31歳男性.下痢症状と発熱を認めた数日後より両手の筋力低下や長距離歩行時の疲れやすさを自覚.上肢では両側の指伸筋にめだつ遠位筋優位の筋力低下を認め下垂指を呈しており,下肢では左下腿三頭筋にめだつ筋力低下を認めた.先行感染の病歴,髄液での蛋白細胞解離,神経伝導検査所見から軸索型ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome,以下GBSと略記)と診断.血清にてIgG抗GM1抗体が陽性であった.GBSでは四肢遠位に限局した筋力低下を来す臨床型が知られているが,下垂指が特徴的であった本例はfinger drop variantとして四肢遠位型GBSの亜型と考えられ,下垂指を来す他疾患との鑑別に注意を要する.
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(臨床神経, 62:810−813, 2022)
key words:ギラン・バレー症候群,acute motor axonal neuropathy,下垂指,finger drop variant,抗GM1抗体

(受付日:2022年5月25日)