臨床神経学

症例報告

病変の自然退縮を認めた臨床的に中枢神経ゴム腫が想定された1例

野原 聡平1)* , 由比 友顕1)

Corresponding author:九州労災病院門司メディカルセンター脳神経内科〔〒801-8502 福岡県北九州市門司区東港町3-1〕
1) 九州労災病院門司メディカルセンター脳神経内科

症例は46歳男性.4ヶ月前から頭痛がみられていた.回転性めまい,嘔気が出現し当院へ救急搬送となった.頭部MRI造影T1強調画像で右中小脳脚と左前頭葉にリング状増強効果を呈する結節を脳表近くで認め,その周囲にFLAIR画像で高信号域を認めた.血液・髄液検査結果より神経梅毒と診断し画像所見から中枢神経ゴム腫と考えられた.HIV検査は陰性であった.経過観察中,治療前に施行したMRIで病変の自然退縮を認めた.ペニシリンGを14日間投与した後に病変は完全に消失した.その後再燃なく経過している.中枢神経ゴム腫の画像所見にはいくつかの特徴が知られているが,本症例では病変の自然退縮という珍しい所見がみられた.
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(臨床神経, 61:552−557, 2021)
key words:神経梅毒,中枢神経ゴム腫,ペニシリンG,自然退縮

(受付日:2021年2月10日)