臨床神経学

症例報告

造影MRIで視神経周囲に増強効果を認め,ステロイドパルス療法後に虚血性視神経症を発症した巨細胞性動脈炎の1例

田代 匠1)*, 辻本 篤志1), 中村 憲道1)

Corresponding author: 独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院脳神経内科〔〒806-8501 福岡県北九州市八幡西区岸の浦1丁目8番1号〕
1) 独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院脳神経内科

症例は76歳女性.1ヶ月前からの頭痛と霧視を主訴に入院し,側頭動脈の圧痛と肥厚を認めた.血液検査で著明な炎症所見を認め,頭部造影MRI で両側の浅側頭動脈のみならず視神経周囲に増強効果がみられた.視力,視野,眼底に異常はなかったが,中心フリッカー値は軽度低下していた.巨細胞性動脈炎を疑い,入院翌日に右浅側頭動脈生検を施行し,病理で巨細胞性動脈炎に矛盾しない所見を得た.ステロイドパルス療法とアスピリンを開始したが,ステロイド治療後にも関わらず左虚血性視神経症を発症した.造影MRIでの視神経周囲の増強効果は巨細胞性動脈炎の眼合併症の評価と治療において有用と考えられた.
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(臨床神経, 61:851−855, 2021)
key words:頭痛,虚血性視神経症,巨細胞性動脈炎,造影MRI

(受付日:2021年5月17日)