臨床神経学

症例報告

一過性てんかん性健忘で発症した抗GABAB受容体抗体陽性脳炎の1例

小川 慧子1), 打田 佑人1)2)*, 小林 晋3), 高田 幸児1), 寺田 清人4)5), 松川 則之2)

Corresponding author: 名古屋市立大学大学院脳神経内科学〔〒467-8601 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1〕
1) 豊川市民病院脳神経内科
2) 名古屋市立大学大学院脳神経内科学
3) 豊川市民病院放射線科
4) 国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター脳神経内科
5) てんかんと発達の横浜みのる神経クリニック

症例は50歳の健常女性.一過性の健忘を繰り返した後,強直間代性痙攣が出現し,当院に搬送された.頭部MRIで左側頭葉内側にFLAIR高信号,脳波で左側頭部を起始とするてんかん性放電が確認され,急性辺縁系脳炎に伴う側頭葉てんかんと診断した.健忘発作時に記憶以外の高次脳機能は保たれており,臨床症候から一過性てんかん性健忘(transient epileptic amnesia,以下TEAと略記)と考えられた.中年女性に初発した原因不明の急性辺縁系脳炎であり,自己免疫性脳炎を念頭に免疫療法を施行し,健忘は消失した.後日,髄液中の抗GABAB受容体抗体陽性と判明した.本症例は,GABAB受容体の機能障害により,TEAが惹起された可能性を示唆する貴重な症例である.
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(臨床神経, 61:6−11, 2021)
key words:一過性てんかん性健忘,抗GABAB受容体抗体,自己免疫性脳炎

(受付日:2020年2月9日)