臨床神経学

症例報告

中脳下部病変により眼球運動障害と尿閉をきたした1例

齊ノ内 信1)2)*, 中村 道三1)3), 増田 裕一1)4), 大谷 良1)

Corresponding author: 独立行政法人国立病院機構京都医療センター脳神経内科〔〒612-0861 京都市伏見区深草向畑町1-1〕
1) 独立行政法人国立病院機構京都医療センター脳神経内科
2) 現:新潟大学脳研究所病理学分野
3) 現:社会医療法人愛仁会尼崎だいもつ病院脳神経内科
4) 現:大阪医科大学内科学IV 教室脳神経内科

症例は86歳女性.調理中に突然出現した複視を主訴に来院した.両眼性複視,両側眼球内転障害と輻湊障害,両側側方注視時に外転眼のみに粗大な単眼性眼振を認めた.入院翌日のMRIで中脳下部背側に拡散低下域を認めた.入院1日半後に尿閉,尿意の消失に気付かれた.脳梗塞を念頭に抗血小板薬で治療を行い,発症2ヶ月後には眼球運動は正常になり,複視も消失.尿閉も消失した.眼球運動障害については動眼神経の内転筋亜核から両側medial longitudinal fasciculusにかけての病変を想定している.尿閉については排尿中枢の一つである中脳水道周囲灰白質への障害が原因と考えている.中脳の微小な梗塞で尿閉を呈する例は稀であるため報告する.
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(臨床神経, 61:24−28, 2021)
key words:尿閉,眼球運動障害,MLF症候群,中脳水道周囲灰白質,中脳梗塞

(受付日:2020年5月29日)