臨床神経学

症例報告

緑膿菌感染による肥厚性硬膜炎に伴い硬膜下水腫を呈した1例

國井 美紗子1)*, 岡本 光生1), 竹井 暖1), 窪田 瞬1), 中村 治子1), 田中 章景1)

Corresponding author: 横浜市立大学医学部神経内科学・脳卒中医学〔〒233-0004 神奈川県横浜市金沢区福浦3-9〕
1) 横浜市立大学医学部神経内科学・脳卒中医学

78歳女性.右眼窩先端症候群・両側真菌性副鼻腔炎に対する内視鏡下右視神経管開放術・副鼻腔手術施行2ヶ月後,精神症状,異常行動が出現した.当初右慢性硬膜下血腫の診断であったが,穿頭ドレナージ術により高蛋白の滲出液貯留が確認された.原因は不明であり,10日後に液体再貯留と硬膜肥厚を認めた.硬膜生検による組織培養にて初めて緑膿菌が検出され,レボフロキサシンの内服により軽快した.局所の緑膿菌感染に続発する肥厚性硬膜炎は,疼痛を初発症状とし進行すると脳神経麻痺などを呈する経過が典型的であるが,疼痛なしに硬膜下水腫を伴い亜急性の精神症状でのみ発症した症例は報告されておらず,本例は稀な症例と考えられた.
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(臨床神経, 60:538−542, 2020)
key words:緑膿菌,感染性肥厚性硬膜炎,硬膜下水腫

(受付日:2020年1月16日)