臨床神経学

症例報告

軽度のコミュニケーション障害で発症し長期経過を呈した神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症の1例

横手 顕1)2), 合馬 慎二1), 高橋 和範3), 原 文彦3), 吉田 邦広4), 坪井 義夫1)*

Corresponding author: 福岡大学医学部脳神経内科学教室〔〒814-0180 福岡市城南区七隈7丁目45-1〕
1) 福岡大学医学部脳神経内科学教室
2) 福西会南病院神経内科
3) 文佑会原病院神経内科
4) 信州大学医学部神経難病学講座

症例は64歳,女性.40歳頃より軽度のコミュニケーション障害が出現したが日常生活に支障はなかった.59歳から健忘,幻覚,妄想といった認知機能障害が出現し,約5年の経過で錐体路,錐体外路症候が出現し,歩行困難となった.脳MRIにて大脳の萎縮,脳梁の菲薄化,両側前頭葉優位に大脳白質病変を認めた.コロニー刺激因子1受容体(colony stimulating factor 1 receptor; CSF1R )のexon 18内にp.R777Qの変異を認めた.明らかな家族歴はなく,神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症と診断した.本症例のように軽度の精神症状を呈して長期期間経過した臨床経過は希少であり報告する.
Full Text of this Article in Japanese PDF (2913K)

(臨床神経, 60:420−424, 2020)
key words:神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症,コロニー刺激因子1受容体(colony stimulating factor 1 receptor; CSF1R),若年性認知症,微小石灰化

(受付日:2019年9月12日)