臨床神経学

症例報告

結核性髄膜炎との鑑別を要した中枢神経限局性神経サルコイドーシスの1例

出口 一郎1)*, 長田 高志1), 鈴木 智成2), 田端 晋也2), 新井 栄一3), 内野 晃4), 林 健1), 橋 愼一1), 百島 祐貴5), 尾 昌樹1)

Corresponding author: 埼玉医科大学国際医療センター脳神経内科・脳卒中内科〔〒350-1298 埼玉県日高市山根1397-1〕
1)埼玉医科大学国際医療センター脳神経内科・脳卒中内科
2)埼玉医科大学国際医療センター脳脊髄腫瘍科
3)埼玉医科大学国際医療センター病理診断科
4)埼玉医科大学国際医療センター画像診断科
5)慶應義塾大学病院予防医療センター

症例は62歳女性.全身性間代性痙攣で当院へ搬送された.脳脊髄液検査で単核球優位の細胞数の軽度増多,著明な蛋白上昇および糖低下(血糖の17%)を認め,頭部Gd造影MRIにて軟髄膜の瀰漫性,多発結節状増強効果を認めた.結核性髄膜炎,サルコイドーシス,悪性リンパ腫,癌性髄膜炎,中枢神経系血管炎などを疑い精査したが,いずれも積極的に支持する所見は得られなかった.第13病日に硬膜および脳生検を行い,神経サルコイドーシスと診断,ステロイド治療を行い画像所見の著明な改善を示した.中枢神経に限局する神経サルコイドーシスの診断は容易ではなく,早期の病理診断が必須と考える.
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(臨床神経, 60:213−218, 2020)
key words:神経サルコイドーシス,結核性髄膜炎,髄液糖低下,脳生検

(受付日:2019年10月22日)