臨床神経学

症例報告

抗SRY-Related HMG-Box Gene 1(SOX1)抗体陽性の舞踏運動の1例

山岸 拓磨1), 井上 佳奈1), 大内 東香1), 柴野 健1), 原 賢寿1)*

Corresponding author: 秋田赤十字病院神経内科〔〒010-1495 秋田市上北手猿田字苗代沢222-1〕
1) 秋田赤十字病院神経内科

症例は77歳男性である.71歳時に肺腺癌の既往あり.1か月前から右上下肢の舞踏運動が出現した.髄液のオリゴクローナルバンドとIgG index高値を認めたことから自己免疫性の機序を疑い抗神経抗体を検索したところ,小細胞肺癌を伴うLambert-Eaton症候群の血清マーカーとして知られる抗SRY-Related HMG-Box Gene 1(SOX1)抗体が陽性であったが,腫瘍の併存は認めなかった.また非腫瘍性自己免疫性舞踏病の原因と知られる抗リン脂質抗体や抗LGI1抗体,抗CASPR2抗体はすべて陰性であった.これまで抗SOX1抗体が陽性となる舞踏運動の報告はなく,自己免疫性の舞踏運動が疑われた.
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(臨床神経, 60:852−856, 2020)
key words:抗SOX1抗体,舞踏運動,傍腫瘍性神経症候群,肺癌,自己免疫

(受付日:2020年3月27日)