臨床神経学

症例報告

COVID-19蔓延期における発症時刻不明脳梗塞に対するMRIと静注血栓溶解療法:症例報告

鴨川 徳彦1), 江頭 柊平1), 田中 寛大2)*, 塩澤 真之1), 井上 学1)2), 太田 靖利3), 西井 達矢3), 福田 哲也3), 古賀 政利1)

Corresponding author: 国立循環器病研究センター〔〒564-8565 大阪府吹田市岸部新町6番1号〕
1) 国立循環器病研究センター脳血管内科
2) 国立循環器病研究センター脳卒中集中治療科
3) 国立循環器病研究センター放射線部

COVID-19蔓延期の発熱のない81歳女性.起床時からの失語,右上下肢麻痺で発見から44分で搬送された.CTで左中大脳動脈閉塞があり,早期虚血性変化はなかった.MRIを追加し拡散強調像の虚血性変化をfluidattenuated inversion recovery(FLAIR)像で認めず,最終健常から1,660分,発見から116分でアルテプラーゼを投与した.続いて実施した血管造影では左中大脳動脈遠位部に高度狭窄があったが,経管的介入はせずに発見から164分で再開通し神経症候も消失した.COVID-19蔓延期の脳卒中救急では感染管理上,MRIを行わないことが望ましいとされるが,発症時刻不明例での血栓溶解療法の適応決定にMRIは必須で,施設毎の体制整備が重要である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (5266K)

(臨床神経, 60:706−711, 2020)
key words:COVID-19,脳卒中,MRI,血栓溶解療法,発症時刻不明

(受付日:2020年5月20日)