臨床神経学

症例報告

バセドウ病の身体所見を欠き,舌を含む四肢体幹の筋萎縮をきたした甲状腺中毒性ミオパチーの1例

北原 匠1), 登内 孝文1), 大津 裕1), 河内 泉2), 小宅 睦郎1), 藤田 信也1)*

Corresponding author: 長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 新潟県長岡市千秋2丁目297-1〕
1) 長岡赤十字病院神経内科
2) 新潟大学医歯学総合病院脳神経内科

症例は74歳男性.3年前から四肢近位部痛があり,約2年の経過で体重が15kg減少し,3ヵ月前から下肢の脱力感が出現した.舌を含む四肢体幹の筋萎縮と筋力低下を認めた.体重減少以外にバセドウ病の身体所見がなかったが,甲状腺機能亢進と可溶性IL-2受容体(soluble interleukin-2 receptor; sIL-2R)の上昇を認め,TSH受容体抗体が陽性で,バセドウ病による甲状腺中毒性ミオパチーと診断した.血清CKの上昇はなく,筋生検ではタイプ1線維優位の筋萎縮を認めた.抗甲状腺薬の投与で,甲状腺機能とsIL-2Rは正常化し,筋力低下と筋萎縮は改善した.治療前後の筋CTで筋量の増加が確認され,筋萎縮は異化亢進による筋量の減少を反映していると考えられた.
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(臨床神経, 60:677−681, 2020)
key words:甲状腺中毒性ミオパチー,舌萎縮,筋萎縮性側索硬化症,バセドウ病,可溶性IL-2受容体

(受付日:2019年9月5日)