臨床神経学

総説

ウイルソン病の診断と治療のポイント
─日本版ガイドラインの発表をふまえて─

清水 教一1)*

Corresponding author: 東邦大学医療センター大橋病院小児科〔〒153-8515 東京都目黒区大橋2-22-36〕
1)東邦大学医療センター大橋病院小児科

ウイルソン病は常染色体劣性遺伝形式をとる先天性銅代謝異常症である.幼児期以降の急性・慢性の肝障害および学童期以降の神経あるいは精神症状をみた時,同胞が本症と診断された時は,本症の可能性を考える.診断のための検査所見は,血清セルロプラスミン値低下,尿中銅排泄量増加,肝銅含量増加,そしてATP7B遺伝子の変異である.これらの検査により診断を確定する.内科的治療は銅キレート薬(D-ペニシラミンまたは塩酸トリエンチン)あるいは亜鉛薬(酢酸亜鉛)の経口投与を行う.中等症までの肝障害には酢酸亜鉛単剤,神経症状には塩酸トリエンチン単剤,そしてそれぞれの重症症例には塩酸トリエンチンと酢酸亜鉛の併用を推奨する.
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(臨床神経, 59:565−569, 2019)
key words:銅,セルロプラスミン,ATP7B遺伝子,Kayser-Fleischer 角膜輪

(受付日:2018年10月16日)