臨床神経学

症例報告

痙攣に伴うMRI信号変化と脳腫瘍病変との鑑別が困難であった1例

和田山 智哉1)*, 伊藤 絢1), 大坪 亮一1), 大谷 恭子2), 森川 雅史3), 上田 直子1)

Corresponding author: 淀川キリスト教病院脳血管神経内科〔〒533-0024 大阪市東淀川区柴島1丁目7番50号〕
1)淀川キリスト教病院脳血管神経内科
2)淀川キリスト教病院病理診断科
3)淀川キリスト教病院脳神経外科

症例は48歳,男性.全身痙攣発作後に左顔面,上肢の間代性痙攣が持続し入院.ジアゼパム,ホスフェニトイン,レベチラセタム投与で止痙したが,再び部分てんかん重積状態となり全身麻酔下で管理した.右前頭葉に皮質を含む拡散強調画像,T2強調画像で高信号の病変を認め,造影MRIで病変の中心部とその近傍の皮質が増強された.第6病日に開頭腫瘍摘出術を施行.増強された中心部で退形成性乏突起膠腫を認めた一方,近傍の皮質には腫瘍組織は認めず,増強効果はてんかん重積によるものと考えられた.てんかん重積に伴う造影MRI異常信号は,臨床的に脳腫瘍などの他疾患との鑑別が困難な場合があり,慎重な判断が必要と考えられた.
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(臨床神経, 59:515−519, 2019)
key words:痙攣,てんかん重積,MRI信号変化,増強効果,脳腫瘍

(受付日:2019年2月18日)