臨床神経学

症例報告

構音障害で発症し,一過性脳虚血発作との鑑別を要した血管性浮腫の1例

田中 里佳1), 後藤 聖司2)*, 安田 光宏1), 高松 学文1)

Corresponding author: 九州医療センター脳血管・神経内科〔〒810-8563 福岡県福岡市中央区地行浜1丁目8番地1号〕
1)九州医療センター臨床研究センター救急部
2)九州医療センター脳血管・神経内科

患者は85歳女性である.突然,呂律の回り難さが出現し当院へ救急搬送された.診察上,構音障害を認め,口腔内を観察すると舌の腫脹が示唆され症状に影響している可能性を疑ったが,開口が不十分で評価が困難であった.急性発症であり脳血管障害の可能性は否定できず,緊急で頭部MRIを施行した.画像上,脳実質内に異常は認めなかったが,T2強調画像矢状断で舌,軟口蓋の浮腫を認めた.入院翌日には舌腫脹,構音障害は軽快した.2か月前からアンギオテンシン変換酵素阻害薬を服用しており,血管性浮腫による症状と診断した.急性の構音障害の鑑別診断において,血管性浮腫による舌腫脹の可能性も念頭に置き診療にあたる必要がある.
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(臨床神経, 59:356−359, 2019)
key words:血管性浮腫,舌腫脹,構音障害,ACE阻害薬,高齢者

(受付日:2019年2月1日)