臨床神経学

症例報告

脊索腫により鼻性髄液漏をきたし細菌性髄膜炎をくりかえした1例

安藤 昭一朗1), 薄田 浩幸2), 梅田 能生1), 梅田 麻衣子1), 小宅 睦郎1), 藤田 信也1)*

Corresponding author: 長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2108 新潟県長岡市千秋2丁目297-1〕
1)長岡赤十字病院神経内科
2)長岡赤十字病院病理診断部

症例は52歳男性.発熱・頭痛と意識障害で入院した.炎症反応は軽度で,血液・細菌培養も陰性だったが,髄液の多核球優位の細胞数上昇,蛋白の著増,糖の低下から細菌性髄膜炎として,抗菌薬による治療で後遺症なく退院した.5カ月後に細菌性髄膜炎を再発し入院した.問診で断続的な透明鼻汁の存在が判明し,鼻汁の糖定性が陽性だったことから,鼻性髄液漏と診断した.頭部MRIで斜台部の骨欠損を確認して,髄液漏閉鎖術を施行し,術中に切除した蝶形骨洞粘膜組織から脊索腫と病理診断された.炎症所見も乏しく感染源が明らかでなかったが,問診から鼻性髄液漏と診断し,細菌性髄膜炎の原因を同定し得た症例である.
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(臨床神経, 59:264−267, 2019)
key words:鼻性髄液漏,再発性細菌性髄膜炎,脊索腫,MR脳槽撮影

(受付日:2019年1月11日)