臨床神経学

短報

急性脊髄炎を主徴とする神経障害に抗中性糖脂質抗体の関与が示唆された1例

寺澤 英夫1)*, 清水 洋孝1), 上原 敏志1), 喜多 也寸志1), 島 さゆり2), 武藤 多津郎2)

Corresponding author: 兵庫県立姫路循環器病センター神経内科〔〒670-0981 兵庫県姫路市西庄520〕
1)兵庫県立姫路循環器病センター神経内科
2)藤田保健衛生大学脳神経内科学

症例は48歳男性である.発熱の先行症状の後に急性脊髄炎を発症した.脊髄MRIでは,C6よりTh8レベルまで連続する長大な脊髄病変をみとめ,免疫療法に奏功して脊髄病変は消退し,神経症状も軽快した.血清抗aquaporin-4(AQP4)抗体,抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体は陰性であったが,血清と髄液の両者より抗lactosylceramide(LacCer)抗体が急性期に陽性で回復期に弱陽性に低下した.抗中性糖脂質抗体は,脳炎・脳症を欠く急性脊髄炎で陽性になる既報告はなく,急性脊髄炎の病態の鑑別に本抗体を考慮する必要があると考えられた.
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(臨床神経, 59:33−36, 2019)
key words:脊髄炎,ADEM,抗中性糖脂質抗体

(受付日:2018年8月24日)