臨床神経学

症例報告

多彩な幻視と錯視を呈した左後頭葉の脳梗塞の1例

時田 春樹1)3), 竹島 慎一2)4), 竹下 潤2), 下江 豊2), 矢守 茂1), 栗山 勝2)*

Corresponding author: 脳神経センター大田記念病院脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
1)脳神経センター大田記念病院リハビリテーション科
2)脳神経センター大田記念病院神経内科
3)現:川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科
4)現:昭和大学医学部リハビリテーション医学講座

症例は70歳の右利き男性.テレビの右画面が遅れて見えることに気づく.その後の5日間で,多彩な幻視と錯視が出現し,近医で脳梗塞を指摘され入院した.右同名半盲以外特に異常なし.MRIで左後頭回,一部舌状回,楔部の急性期脳梗塞を認めた.入院後も光視や複雑幻視,微視などの症状が出現し,次第に消失したが,光視は約2ヶ月間持続した.このことから光視と複雑幻視,微視の神経基盤は異なることが示唆された.左後頭葉内側面を中心とした領域の損傷によって,盲視野内の複雑幻視の出現は知られているが,光視や微視など多彩な症状が合併している症例は稀である.
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(臨床神経, 58:556−559, 2018)
key words:幻視,錯視,左後頭回,脳梗塞

(受付日:2017年7月21日)