臨床神経学

症例報告

他人の手徴候と感覚性運動失調との鑑別が難しかった右頭頂葉梗塞の1例

神林 隆道1)*, 内田 雄大1), 北國 圭一1), 園生 雅弘1)

Corresponding author: 帝京大学医学部神経内科〔〒173-8605 東京都板橋区加賀2-11-1〕
1)帝京大学医学部神経内科

症例は73歳右利き女性.左手が自分の手のような感じがせず,勝手に動くことを主訴に救急外来受診.左半身の表在・深部感覚障害および左半側空間無視,左上肢の肢節運動失行を認め,さらに左手が自分の手の感じがせず,自分の意思とは矛盾して勝手に動くという他人の手徴候の特徴を有していた.頭部MRIでは右中心後回に限局する脳梗塞を認めた.本症例では,左手の異常行動と思われた症状が,他人の手徴候か,感覚性運動失調かの鑑別が難しかった.Posterior variantの他人の手徴候では,体性感覚路の障害の関与が考えられているが,感覚性運動失調と他人の手徴候の厳密な鑑別は,用語の混乱を避けるためにも重要である.
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(臨床神経, 58:287−291, 2018)
key words:他人の手徴候,感覚性運動失調,脳梗塞,頭頂葉,中心後回

(受付日:2017年9月20日)