臨床神経学

症例報告

片頭痛様頭痛に対しトリプタンの効果がみられた片頭痛の既往のある海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の69歳女性

齋木 美佳1), 鈴木 圭輔1)*, 竹川 英宏1)2), 金谷 英明3), 河本 俊介3), 中村 利生4), 平田 幸一1)

Corresponding author: 獨協医科大学神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕
1)獨協医科大学神経内科
2)獨協医科大学病院超音波センター
3)獨協医科大学脳神経外科
4)リハビリテーション天草病院脳神経内科

症例は前兆のない片頭痛の既往のある69歳女性.右眼窩部痛と4時間以上持続する通常と同部位の吐き気を伴う右前頭部拍動性頭痛が出現した.前医にてエレトリプタンを処方され頭痛は改善していたが,1か月後同部位の激しい頭痛が出現し当科に入院した.神経学的所見に異常はなかった.頭部MR angiographyで海綿静脈洞に異常信号をみとめた.脳血管撮影にて海綿静脈洞部に還流があり海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(cavernous sinus dural arteriovenous fistula; CS-DAVF)と診断した.経静脈的塞栓術を施行し5日後に頭痛は改善した.脳神経麻痺を伴わず片頭痛様頭痛のみをきたし,トリプタンの効果がある場合,CS-DAVFの可能性に注意する必要がある.
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(臨床神経, 58:188−192, 2018)
key words:海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻,トリプタン,片頭痛

(受付日:2017年10月27日)