臨床神経学

症例報告

皮膚粘膜眼症状に先行して神経症状を呈した慢性進行型神経ベーチェット病の1例

渡部 真志1)3)*, 小林 麗1), 長谷川 貴一2), 横井 俊介2), 岡田 久1), 奥田 聡1)

Corresponding author: 国立病院機構名古屋医療センター神経内科〔〒460-0001 名古屋市中区三の丸4-1-1〕
1)国立病院機構名古屋医療センター神経内科
2)国立病院機構名古屋医療センター膠原病内科
3)現:愛媛県立中央病院神経内科

症例は喫煙歴のある77歳男性.12年前から繰り返す回転性眩暈と抑うつ症状が出現した.5年前から徐々に動作緩慢となり,ここ半年で3度目の転倒をして脳震盪疑いで入院した.小脳性運動失調症と球症状が認められた.頭部MRIで小脳と脳幹の萎縮が見られ,123I-IMP SPECTで小脳の血流低下を認めた.血液検査で軽度の炎症反応を認め,HLA-B51が陽性であった.髄液検査で無菌性髄膜炎と髄液IL-6高値が判明した.総合的に慢性進行型神経ベーチェット病を最も疑った.治療開始1ヶ月後に皮膚粘膜症状が現れ,ベーチェット病に矛盾のない皮膚病理所見を得た.診断にHLA-B51と髄液IL-6が有用な可能性がある.
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(臨床神経, 58:105−110, 2018)
key words:慢性進行型神経ベーチェット病,小脳性運動失調症,HLA-B51,髄液IL-6,123I-IMP SPECT

(受付日:2017年8月15日)