臨床神経学

症例報告

回収した血栓により診断した感染性心内膜炎の1例

中西 郁1), 河野 浩之1)*, 天野 達雄1), 大森 嘉彦2), 菅間 博2), 平野 照之1)

Corresponding author: 杏林大学医学部付属病院〔〒181-0004 東京都三鷹市新川6-20-2〕
1)杏林大学医学部付属病院脳卒中医学
2)杏林大学医学部付属病院病理学

症例は80歳の女性である.右半身脱力,しゃべりにくさを主訴に救急搬送された.右不全片麻痺,感覚障害,運動性失語,構音障害を認めた.頭部MRAで左中大脳動脈M2閉塞を認め,急性期脳梗塞と診断し,recombinant tissue plasminogen activator静注および血栓回収療法を行った.来院時発熱と炎症所見を認めていた.回収した血栓からグラム陽性球菌の多数の集塊を認めることが後日判明した.回収した血栓の病理学的診断により,脳梗塞の発生機序は感染性心内膜炎による脳塞栓症と診断した.血栓回収により菌塊が確認された脳梗塞の報告例は稀であり,回収した血栓の病理学的診断は脳梗塞の原因を特定する上で極めて重要であった.
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(臨床神経, 58:35−40, 2018)
key words:脳梗塞,感染性心内膜炎,血栓回収療法

(受付日:2017年9月20日)