臨床神経学

症例報告

不随意運動を主徴とし,両側大脳基底核病変を呈したビタミンB12欠乏症の1例

北村 泰佑1), 後藤 聖司1)2)*, 木 勇人1), 喜友名 扶弥1), 吉村 壮平1), 藤井 健一郎1)

Corresponding author: 九州医療センター脳血管・神経内科〔〒810-8563 福岡県福岡市中央区地行浜1-8-1〕
1)福岡赤十字病院脳血管内科
2)九州医療センター脳血管・神経内科

患者は86歳女性である.入院1年前より認知機能低下を指摘され,入院2週間前より食思不振,幻視が出現し,意識障害をきたしたため入院した.四肢に舞踏病様の不随意運動を生じ,頭部MRI拡散強調画像で両側基底核は左右対称性に高信号を呈していた.血液検査ではビタミンB12値は測定下限(50pg/ml)以下,総ホモシステイン値は著明に上昇,抗内因子抗体と抗胃壁細胞抗体はともに陽性であった.上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎を認めたため,吸収障害によるビタミンB12欠乏性脳症と診断した.ビタミンB12欠乏症の成人例で,両側基底核病変をきたし,不随意運動を呈することはまれであり,貴重な症例と考え報告する.
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(臨床神経, 56:499−503, 2016)
key words:ビタミンB12欠乏症,不随意運動,基底核,悪性貧血

(受付日:2016年3月8日)