臨床神経学

症例報告

片側顔面神経麻痺で発症し抗菌薬を投与したが髄膜炎を再発したライム病の1例

清水 久央1)*, 原谷 浩司2), 宮崎 将行1), 掛樋 善明1), 長見 周平1), 片浪 雄一3), 川端 寛樹4), 高橋 信行1)

Corresponding author: 市立奈良病院神経内科〔〒630-8305 奈良県奈良市東紀寺町1丁目50番1号〕
1)市立奈良病院神経内科
2)近畿大学医学部腫瘍内科
3)国立国際医療研究センター病院国際感染症センター
4)国立感染研究所細菌第一部・第4室

症例は38歳男性.ダニ刺咬後2ヶ月経過してから片側顔面神経麻痺を呈した.ベル麻痺としてステロイド,アシクロビルを投与し2週間で症状は消失.ライム病の可能性も考慮しドキシサイクリンなどの内服を2週間行った.2ヶ月後に頭痛,発熱などの髄膜炎症状が出現.髄液検査では単核球優位の細胞数上昇を示した.アシクロビルの投与で症状は軽快したが血清ボレリア抗体が陽性でありライム病による髄膜炎と考えた.セフトリアキソンを点滴静注し以後再発はない.抗菌薬を投与したにもかかわらず髄膜炎に進展する症例はまれである.ライム病は本邦では症例が少なく診断が難しい疾患であるが,治療効果の判断にも注意が必要であると思われ報告した.
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(臨床神経, 56:495−498, 2016)
key words:ライム病,顔面神経麻痺,髄膜炎,ドキシサイクリン,抗菌薬

(受付日:2016年2月23日)