臨床神経学

短報

フィンゴリモド投与中に帯状疱疹を発症した多発性硬化症の検討

田中 正美1)*

Corresponding author: NHO宇多野病院多発性硬化症センター〔〒616-8255 京都市右京区鳴滝音戸山8〕
1)NHO宇多野病院多発性硬化症センター

多発性硬化症の再発予防で投与されるフィンゴリモド治療中のヘルペス感染症が注目されている.3例の帯状疱疹患者を経験したので,免疫抑制剤であるタクロリムス投与中の視神経脊髄炎患者などを対照にリスクを検討した.32例のフィンゴリモド治療群でのリスク(40/1,000 patient-years)は45例の対照群(6/1,000)より有意に高かった(P < 0.0001,オッズ比:6.90).免疫抑制剤内服中の患者以上に,本症でフィンゴリモド治療に当たっては帯状疱疹の発症に留意する必要があると考えられた.
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(臨床神経, 56:270−272, 2016)
key words:多発性硬化症,視神経脊髄炎,フィンゴリモド,タクロリムス,帯状疱疹ウイルス

(受付日:2015年9月2日)