臨床神経学

症例報告

細菌性髄膜炎治療中に意識障害が出現し,非痙攣性てんかん重積との鑑別が問題となったCefepime脳症の1例

戸田 諭補1)*, 山崎 峰雄1), 太田 智大1), 藤澤 洋輔1), 木村 和美1)

Corresponding author: 日本医科大学千葉北総病院神経内科〔〒270-1613 千葉県印西市鎌苅1715〕
1)日本医科大学千葉北総病院神経内科

症例は64歳男性である.発熱・食欲不振・後頸部痛で当院を受診し,髄液検査より細菌性髄膜炎と診断され抗菌薬が投与された.頭部MRIにて多発性脳梗塞が認められ,感染性心内膜炎由来の細菌性髄膜炎を疑い,Cefepime とGentamicinを投与したところ,投与3日後に傾眠傾向を認め,ミオクローヌス・羽ばたき振戦が出現し,脳波では全般性周期放電及び三相波が認められた.非痙攣性てんかん重積との鑑別が困難であったが,Cefepimeの投与を中止したところ速やかに症状改善を認めCefepime脳症と診断した.Cefepime脳症は頻度が高く,腎機能障害・肝機能障害患者および脳梗塞・髄膜炎のような血液脳関門が破壊される病態で起きやすく,注意深く投与すべきだと考えられた.
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(臨床神経, 56:678−683, 2016)
key words:Cefepime脳症,細菌性髄膜炎,非痙攣性てんかん重責

(受付日:2016年4月29日)