臨床神経学

症例報告

視神経管開放術により失明を免れたアスペルギルス感染症による眼窩先端症候群の1例

吉田 健二1)3)*, 白田 明子1), 佐藤 拓2), 岸田 悠吾2), 齋藤 清2), 山根 清美1)

Corresponding author: 福島県立医科大学神経内科〔〒960-1295 福島県福島市光が丘1番地〕
1)太田熱海病院脳神経センター神経内科
2)福島県立医科大学脳神経外科
3)現:福島県立医科大学神経内科

症例は71歳の女性である.2か月の経過で出現・進行した,左眼窩部痛および頭痛,複視,左眼瞼下垂を主訴に来院した.左視力低下,左眼瞼下垂,左眼内外転障害を認め,不全型左眼窩先端症候群であった.頭部MRIで左眼窩円錐部に異常信号を認め,血清β-Dグルカンが上昇,血清アスペルギルス抗原とアスペルギルス抗体がともに陽性であった.抗真菌薬を開始したが症状が進行しため視神経管開放術とステロイドパルス療法を施行すると,症状は徐々に改善.同部位の病理標本からアスペルギルス菌体を検出した.アスペルギルス感染症に伴う眼窩先端症候群に対して視神経管開放術を施行し,失明を免れ眼球運動も回復した稀な症例であり報告する.
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(臨床神経, 56:1−6, 2016)
key words:アスペルギルス感染症,眼窩先端症候群,視神経管開放術

(受付日:2015年6月29日)