臨床神経学

症例報告

ε4/ε2 のアポリポ蛋白E遺伝子型を有したAmyloid-β-related cerebral angiitisの1例

小倉 礼1)*, 守吉 秀行1), 中井 紀嘉1), 西田 卓1), 北川 諭2), 吉田 眞理3), 安田 武司1), 伊藤 泰広1)

Corresponding author: トヨタ記念病院脳卒中センター神経内科〔〒471-8513 愛知県豊田市平和町1-1〕
1)トヨタ記念病院脳卒中センター神経内科
2)トヨタ記念病院臨床検査科
3)愛知医科大学加齢医科学研究所

症例は53歳男性である.歩行障害・認知機能障害が半年の経過で進行し,頭部MRIで右後頭葉脳表の造影効果をともなうT2WI高信号病変をみとめた.脳生検でAβ関連血管炎(amyloid-β-related angiitis; ABRA)と診断した.生検後に痙攣を反復したため早期にステロイド治療を導入し,プレドニゾロン単独で良好に経過した.ApoE遺伝子型はまれなε4/ε2を示した.ε4はABRAでもっとも多くみられ,血管壁へのAβ沈着にかかわるとされる.一方,ε2は血管壁の破壊性変化や血管炎症のリスクとなりうる.本例ではε2の存在下に手術侵襲で炎症が惹起され,痙攣を誘発した可能性が考えられた.
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(臨床神経, 55:561−566, 2015)
key words:原発性中枢神経系血管炎,アミロイドアンギオパチー,脳生検,痙攣,アポリポ蛋白

(受付日:2014年11月21日)