臨床神経学

症例報告

大脳基底核の慢性脳内血腫の2症例
―発生頻度をふくめ―

河野 龍平1), 石井 則宏2), 高松 和弘1), 下江 豊1), 大田 慎三2), 栗山 勝1)*

Corresponding author: 脳神経センター大田記念病院脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
1)脳神経センター大田記念病院脳神経内科
2)脳神経センター大田記念病院脳神経外科

大脳基底核に生じたまれな慢性脳内血腫の2症例を報告する.症例1は48歳の男性.高血圧性被殻出血で発症し,14日目に血腫増大をみとめ,28日目に内視鏡的血腫除去を施行した.血腫の被膜に血管増生をともなう肉芽組織をみとめた.症例2は54歳の男性.右被殻と左視床の脳出血で,11日以後に両血腫の増大をみとめたが,保存的に治療した.52歳から10年間に5回の再発性脳内出血を発症した.脳血管撮影で異常血管をみとめなかったが,潜在性の血管異常が推測された.脳出血から2週目以後に症状,画像所見の改善がない症例は,本症を考慮することが重要である.本症の発生頻度は全脳出血の0.04%,基底核出血の0.08%であった.
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(臨床神経, 55:490−496, 2015)
key words:慢性脳内血腫,基底核,被膜,治療,発生頻度

(受付日:2015年1月19日)