臨床神経学

症例報告

未知相貌に対するhyperfamiliarityを呈した脳炎の21歳女性例

宮腰 夏輝1)*, 板東 充秋1), 清水 俊夫1), 川田 明広1), 松原 四郎1), 中野 今治1)

Corresponding author: 都立神経病院脳神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕
1)都立神経病院脳神経内科

症例は21歳の女性.先行感染後,発熱,頭痛,痙攣発作を生じ入院.前向性健忘,逆向性健忘が残存したが,それ以外は生活に不自由のない状況であり痙攣再発もなかった.髄液で軽度の細胞数増加あり.脳波では左側頭部起源がうたがわれる鋭波をみとめた.入院5日目に初対面の医師や看護師,入院中の患者に対し会ったはずがないのに以前にみたことがあるように思うと訴え,この症状は約20日間持続した.既知の相貌に関する異常はなく,相貌失認もなかった.心理検査では言語性の記憶障害がうたがわれ,退院時も逆向性健忘は残存した.類例の検討では言語性記憶障害例もあるが記憶障害のない例もある.左側頭葉病変とhyperfamiliarityには関連が示唆される.
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(臨床神経, 55:459−464, 2015)
key words:脳炎,デジャビュ,hyperfamiliarity for faces

(受付日:2014年5月28日)