臨床神経学

症例報告

緩徐進行性の歩行障害と記銘力低下で発症したクリプトコッカス脳室炎の1例

山城 亘央1), 長坂 高村1)*, 高木 隆助1), 三輪 道然1), 新藤 和雅1), 瀧山 嘉久1)

Corresponding author: 山梨大学医学部神経内科学講座〔〒409-3893 山梨県中央市下河東1110〕
1)山梨大学医学部神経内科学講座

症例は54歳の男性である.2010年12月歩行障害を発症し,2011年2月には記銘力低下も出現した.頭部MRIにて脳室周囲のT2高信号と脳室壁,脈絡叢の造影効果をみとめた.髄液は細胞数・蛋白上昇,糖低下をみとめ,クリプトコッカス抗原陽性から,クリプトコッカス脳室炎と診断した.リポゾーマル・アムホテリシンB,フルコナゾールにて治療を開始したが,副作用が出現したためボリコナゾール,フルシトシン,イトラコナゾールに変更した.本症例では頭部MRIにおける側脳室後角の隔壁形成をみとめ,脳室炎診断の一助となった.クリプトコッカス髄膜脳炎においてはまれながら脳室炎で発症するものがあることに留意すべきである.
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(臨床神経, 55:81−86, 2015)
key words:クリプトコッカス髄膜脳炎,脳室炎,Cryptococcus neoformans,MRI

(受付日:2013年11月14日)