臨床神経学

症例報告

高次脳機能障害を呈し,経過中に肺出血を来したコレステロール塞栓症の1例

森谷 真之1)2)*, 那波 一郎1), 中野 美佐1), 巽 千賀夫1), 井上 貴美子3), 藤村 晴俊3)

Corresponding author: 市立豊中病院神経内科〔〒560-8565 大阪府豊中市柴原町4丁目14番1号〕
1)市立豊中病院神経内科
2)市立豊中病院リハビリテーション科
3)国立病院機構刀根山病院神経内科

症例は70歳男性である.左足趾が紫色に変色し凍瘡として加療を受けていたが,8か月後に高次脳機能障害が出現したため入院となった.血液検査で好酸球が著増しており,頭部MRIにおいては脳弓,脳梁,基底核,前頭葉に病変を認めた.ステロイドを投与したところ症候の改善を認めたが,突然心肺停止をきたした.剖検においては,高度の肺出血と肺胞の血管炎を認め,大脳,腎,肝などにコレステロール結晶を認めた.脳を含む多臓器へのコレステロール塞栓症を発症し,全身の血管炎が惹起されたことにより,肺出血を発症し致死的な転帰を辿った可能性が考えられた.好酸球増多を伴う脳病変を認めた際には本症の可能性も考える必要がある.
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(臨床神経, 55:823−827, 2015)
key words:コレステロール塞栓症,高次脳機能障害,肺出血,血管炎,好酸球増多

(受付日:2015年2月17日)