臨床神経学

症例報告

自律神経不全症候で発症したT細胞性悪性リンパ腫の1例

田口 宗太郎1)2)*, 中村 友彦1), 山田 孝子1), 御堂 弘1), 道勇 学2), 橋 昭1)

Corresponding author: 公立学校共済組合東海中央病院神経内科〔〒504-8601 岐阜県各務原市蘇原東島町4丁目6番地2〕
1)公立学校共済組合東海中央病院神経内科
2)愛知医科大学神経内科

症例は61歳の男性である.感冒様症状に続き,便秘,座位での眼前暗黒感,嘔気が出現.座位にて顕著な血圧低下あり.末梢神経伝導検査(NCS),心電図CVR-R,MIBG心筋シンチ心縦隔比は正常.血中LD,IL-2Rの高値と脊椎MRIから腫瘍がうたがわれた.傍腫瘍性自律神経ニューロパチーを考えたが原発巣不明.発症2ヵ月後,四肢遠位部手袋靴下型感覚障害と筋力低下が発現し増悪,発症4ヵ月後のNCSで異常を呈し,免疫グロブリン療法を施行したが無効.発症5ヵ月後,顔面皮疹からT細胞性悪性リンパ腫と診断.本例は自律神経不全で初発,末期に感覚運動障害を併発.T細胞性悪性リンパ腫の傍腫瘍性神経症候群としては稀有である.
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(臨床神経, 55:29−32, 2015)
key words:傍腫瘍性神経症候群,悪性リンパ腫,自律神経不全,自律神経ニューロパチー,感覚運動ニューロパチー

(受付日:2014年3月27日)