臨床神経学

症例報告

ネフローゼ症候群の合併が,閉塞血管再開通の阻害因子となった可能性が考えられた脳塞栓症の1例

中西 俊人1)*, 渡邉 聖樹1), 中島 誠1), 野尻 奈央2), 小田 晶2), 安東 由喜雄1)

Corresponding author: 熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野〔〒860-8556 熊本県熊本市中央区本荘1-1-1〕
1)熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野
2)熊本大学大学院生命科学研究部腎臓内科学分野

症例は65歳男性である.突然発症の左片麻痺を主訴に搬送され,急性期脳梗塞の診断でrecombinant tissue plasminogen activator(rt-PA)静注療法が施行されたが,症状の改善がなく緊急脳血管内血行再建術をおこなった.血栓吸引をおこない部分再開通をえたが,その後再閉塞をきたした.入院後,蛋白尿や低アルブミン血症の存在から腎生検をおこない,ALアミロイドーシスによるネフローゼ症候群と診断した.ネフローゼ症候群における血小板粘着能と凝集能亢進が,緊急脳血管内血行再建術中の閉塞血管再開通の阻害因子となった可能性があると考えられた.
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(臨床神経, 55:18−22, 2015)
key words:脳梗塞,ネフローゼ症候群,再開通,血管内治療,ALアミロイドーシス

(受付日:2014年3月4日)