臨床神経学

症例報告

長い髄節におよぶ脊髄後索病変を呈した抗amphiphysin抗体陽性のparaneoplastic neurological syndromeの1例

音成 秀一郎1), 原 直之1)2), 竹島 慎一1), 岩城 寛尚1)3), 下江 豊1), 高松 和弘1), 栗山 勝1)*

Corresponding author: 脳神経センター大田記念病院脳神経内科〔〒720-0825 広島県福山市沖野上町3-6-28〕
1)脳神経センター大田記念病院脳神経内科
2)現 広島市民病院神経内科
3)現 愛媛大学病態治療内科学

症例は53歳の女性である.下肢の感覚異常と著明な深部覚障害による失調性歩行障害が半年で進行した.筋緊張異常や錐体路徴候はみとめない.脊椎MRIでC1からT11の脊髄後索主体に信号変化をみとめられた.脊髄後索,後根神経節(dorsal root ganglion; DRG),末梢神経の障害が推測された.抗amphiphysin抗体が単独陽性であり,造影CTおよびPET/CTにて左傍胸骨リンパ節の腫大とフルオロデオキシグルコースの集積をみとめた.胸腔鏡下リンパ節生検で,癌細胞の転移を確認した.原発巣は不明だったが,病理所見で潜在性乳癌が強く示唆された.脊髄後索の長い病変とDRG障害による亜急性感覚性ニューロパチーを呈した傍腫瘍性神経症候群と診断した.
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(臨床神経, 54:572−576, 2014)
key words:抗amphiphysin抗体,乳癌,亜急性感覚性ニューロパチー,脊髄後索病変,後根神経節

(受付日:2013年10月2日)