臨床神経学

大会長講演

私のKeep Pioneering:神経科学と免疫科学の統合による神経難病のパラダイムシフトをめざして

吉良 潤一1)

1)九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

日本初の独立した神経内科を九州大学に設立した黒岩義五郎先生のモットーは,Keep Pioneeringだった.私は1980年に黒岩先生のもとで多発性硬化症研究を始めた.この間,神経科学と免疫科学は驚異的な進歩を遂げ,神経系と免疫系との間の密接な関連性がみいだされ,両者を統合する神経免疫学という新しい学問領域が形成された.神経科学と免疫科学の最先端のコア部分を絶えず取り込み統合していくことで,神経難病の新たなパラダイムシフトが生まれ,未来の医療が拓かれると期待したい.他方,根治療法のない神経難病患者に対しては,1998年に全国に先駆け難病コーディネータを配置した福岡県重症神経難病ネットワークを立ち上げ,重症神経難病患者の長期・短期レスパイト入院先の確保と療養相談にあたってきた.Keep Pioneeringは,明日の医学を切り拓く研究にとどまらない.今いる難病患者へのケアにも取り組み,社会に対して責任を果たす神経内科をめざすことが望まれる.
Full Text of this Article in Japanese PDF (2327K)

(臨床神経, 54:939−946, 2014)
key words:多発性硬化症,視神経脊髄炎,アトピー性脊髄炎,T細胞,グリア,コネキシン

(受付日:2014年5月22日)