臨床神経学

<Symposium 22-1> 自己免疫性脳炎の最近の知見

抗NMDA受容体脳炎における臨床スペクトラムと治療戦略:現状と問題点

飯塚 高浩1), 井島 大輔1), 金子淳太郎1), 西山 和利1)

1)北里大学医学部神経内科学〔〒252-0374 神奈川県相模原市南区北里1-15-1〕

抗NMDA受容体脳炎は,NR1 subunit上の細胞外立体的エピトープを認識するIgG抗体によって生じる疾患である.本疾患は卵巣奇形腫を有する若年女性に好発するが,性別や腫瘍の有無に関係なくあらゆる年齢層で発症しえる.統合失調症,痙攣,CJD,seronegative NMO,HSV脳炎でも本抗体が検出され,臨床スペクトラムの多様性が指摘されているが,慎重に判断する必要がある.本疾患は治療反応性とされているが,約半数は第一選択免疫療法や腫瘍切除は無効であり,死亡率は約7%,発症24ヵ月後も約20%に高度の後遺症をみとめている.難治例では第二選択免疫療法(cyclophosphamideとrituximab)の早期開始が推奨されているが,本邦では未承認のため,十分な免疫治療ができないのが現状である.
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(臨床神経, 54:1098−1102, 2014)
key words:NMDA受容体,脳炎,臨床スペクトラム,治療戦略,問題点

(受付日:2014年5月23日)