臨床神経学

<Symposium 06-4> 神経感染症における日本からの新たな発信

抗NMDA受容体脳炎の病態における新たな展開:正常卵巣におけるNMDA受容体の同定

立花 直子1), 池田 修一2)

1)市立岡谷病院神経内科〔〒394-8512 長野県岡谷市本町4-11-33〕
2)信州大学脳神経内科,リウマチ・膠原病科

卵巣奇形腫非合併,抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎女性例における抗体提示部位を明らかにする目的でヒト・ウシ卵巣を検索した.ウシ卵巣と未受精卵から精製した蛋白をウエスタンブロット法で分析するとNR1,NR2Bの陽性バンドがえられ,アミノ酸分析ではNMDA受容体のペプチド断片を同定しえた.またウシ未受精卵細胞膜は蛍光抗体法で本症患者血清中のIgGと強く結合した.以上から正常卵細胞細胞膜にはNMDA受容体がほぼ完全な形で存在し,抗原決定基として作用しうると考えられた.生殖年齢の女性に偏って発症する本症は正常卵胞に発現したNMDA受容体が抗原として提示されることにより発症する自己免疫性シナプス脳炎といえる.
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(臨床神経, 54:1031−1033, 2014)
key words:辺縁系脳炎,グルタミン酸受容体,N-methyl-D-aspartate受容体,卵胞,卵巣奇形腫

(受付日:2014年5月21日)