臨床神経学

症例報告

MRI拡散強調画像にて髄膜に高信号域をみとめたWegener肉芽腫症による軟膜・硬膜炎の1例

伊藤 愛1)*, 佐々木 良元1), 朝日 理1), 冨本 秀和1)

Corresponding author: 三重大学医学部神経内科〔〒514-8507 三重県津市江戸橋2丁目174番地〕
1)三重大学医学部神経内科

症例は65歳の女性である.52歳時に発熱と肺腫瘤で発症し,肺生検でWegener肉芽腫症と診断され,ステロイド治療で経過は良好であった.車の運転の仕方がわからない,自宅に閉じこもるなどの行動異常が出現し,当科を受診した.神経心理検査では,前頭葉機能障害,記憶障害,漢字の失書をみとめた.髄液検査は正常で,血清proteinase3 anti-neutrophil cytoplasmic antibody は上昇していた.頭部MRIでは,左大脳半球のくも膜下腔と硬膜下腔に拡散強調画像高信号病変をみとめた.これまでにWegener肉芽腫の髄膜病変がMRI拡散強調画像で高信号を呈した報告はなく,本例の拡散強調画像高信号病変は壊死性肉芽腫を反映していると考えられた.
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(臨床神経, 54:888−891, 2014)
key words:Wegener肉芽腫症,髄膜炎,硬膜炎,MRI,拡散強調画像

(受付日:2013年11月29日)