臨床神経学

症例報告

両側腓腹部に限局した非進行性神経原性筋萎縮症を呈した孤発例の1例

原 賢寿1)*, 竪山 真規2), 鈴木 直輝2), 柴野 健1), 田中 恵子3), 石黒 英明1)

Corresponding author: 秋田赤十字病院神経内科〔〒010-1495 秋田市上北手猿田字苗代沢222-1〕
1)秋田赤十字病院神経内科
2)東北大学医学部神経内科
3)金沢医科大学神経内科

症例は60歳女性である.約3ヵ月前からつま先立ちが困難となり受診した.両側腓腹筋の筋力低下と軽度のCK上昇をみとめ,MRIでは脊髄,馬尾には異常なく,両側腓腹筋,ヒラメ筋に限局した異常信号をみとめた.筋組織では慢性の神経原性筋萎縮症の像をみとめた.Dysferlinの免疫染色では筋細胞膜の染色異常はみとめなかった.退院後1年以上,症状の進行はみとめなかった.高齢発症,孤発性,両側腓腹部に限局した神経原性の筋萎縮を呈し,非進行性の経過をたどる類似例は本邦ではきわめてまれである.本例は未知の脊髄性筋萎縮症あるいはbenign calf amyotrophyと呼ばれる一群に属する疾患と考えられた.
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(臨床神経, 53:551−554, 2013)
key words:孤発性,腓腹筋,非進行性,良性腓腹筋萎縮症,脊髄性筋萎縮症

(受付日:2012年12月6日)