臨床神経学

症例報告

痙性対麻痺を呈した椎骨動脈蛇行による延髄圧迫の1例

鎌田 崇嗣1), 立石 貴久1), 山下 珠代1), 詠田 眞治2), 大八木 保政1), 吉良 潤一1)*

Corresponding author: 九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
1)九州大学大学院医学研究院神経内科学
2)九州大学大学院医学研究院脳神経外科学

症例は58歳男性である.下肢のつっぱり感,歩きにくさが出現し,徐々に悪化.神経学的には,脳神経症候なく,四肢の痙縮,両下肢の脱力,四肢腱反射の著明な亢進と両側病的反射をみとめ,両下肢の表在覚は軽度低下し,痙性歩行であった.脊椎MRI異常なし.血清HTLV-1抗体陰性.頭部MRI/MRAにて両側椎骨動脈の蛇行と,蛇行により圧迫された延髄の変形をみとめた.より圧迫が強い右側の神経血管減圧術を施行.術後,著明な症状の改善がみられた.椎骨動脈の延髄圧迫により脳神経症状を合併せずに痙性対麻痺を呈する症例は非常にまれであるが,外科的治療により良好な予後がえられ,痙性対麻痺の鑑別疾患の一つとして重要と考えられた.
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(臨床神経, 53:356−361, 2013)
key words:椎骨動脈蛇行,痙性対麻痺,神経血管減圧術

(受付日:2012年7月31日)