臨床神経学

短報

舌下神経単独麻痺を呈した急性リンパ性白血病の47歳女性例

上井 康寛1), 橋本 昌也1), 鈴木 正彦1), 崎元 芳大2), 川崎 敬一1), 吉岡 雅之1)*

Corresponding author: 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター神経内科〔〒125-8506 東京都葛飾区青戸6-41-2〕
1)東京慈恵会医科大学葛飾医療センター神経内科
2)東京慈恵会医科大学葛飾医療センター放射線科

症例は47歳女性である.嚥下障害で緊急入院.初診時,頭痛と右舌下神経麻痺に加え,2ヵ月前からの間欠熱があった.血液検査でCRP 5.3 mg/dl,可溶性IL 2レセプター834 U/mlの他異常なく,髄液検査も正常であった.脳MRIで蝶形骨斜台内部と周囲に造影効果をみとめたが,CTで骨破壊像はなかった.悪性腫瘍検索のためのPETで斜台内部と周囲,脾臓,腎臓,左鎖骨上窩と腸間膜リンパ節にFDG異常集積をみとめリンパ増殖性疾患がうたがわれた.間欠熱の出現から3ヵ月後にはじめて末梢血に芽球が出現,骨髄穿刺にて急性リンパ性白血病(minor-bcr/abl陽性)と診断した.同疾患は髄膜への浸潤あるいは脳血管障害が多いが,本例のように舌下神経単独麻痺で発症した症例はなく,貴重と思われ報告した.
Full Text of this Article in Japanese PDF (7019K)

(臨床神経, 53:243−246, 2013)
key words:舌下神経麻痺,急性リンパ性白血病,PET,蝶形骨斜台,静脈叢

(受付日:2012年5月21日)