臨床神経学

<ホットトピックス(4)―3 >

腕神経叢炎の病態と治療

池田 修一1)

1)信州大学医学部脳神経内科,リウマチ・膠原病内科(第三内科)〔〒390-8621 松本市旭3-1-1〕

神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy; NA)は一側上肢に激烈な痛みに続いて麻痺と高度な筋萎縮が起る病態であり,その原因は特発性腕神経叢炎と考えられている.本疾患は従来,自然軽快することから予後良好であると位置付けられてきた.しかし罹患肢の実際の機能予後は半数以上が不良である.その最大の原因は確定診断にいたるまでの期間が長く,多くの患者は発病後2〜3ヵ月後にやっとNAの診断が下されている.このため急性期の疼痛抑制治療,その後の運動機能改善に向けてのリハビリ治療などがほとんどなされていないのが実情である.本疾患が正確かつ早期に診断されるためには一般医家,とくにNA患者が最初に受診する可能性の高い整形外科領域の医師にNAの疾患概念を理解してもらうことである.またNAの成因として腕神経叢における免疫関連の末梢神経炎が推測されており,免疫調整療法は本疾患の有望な治療法になりうる.すでに副腎皮質ステロイドホルモンはNA急性期の疼痛緩和に有効なことが実証されている.それに加えてわれわれは免疫グロブリンの大量静注療法(IVIg)とステロイドパルス療法の併用がNAの運動麻痺に対して有用であることを最近提唱している.
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(臨床神経, 53:969−973, 2013)
key words:腕神経叢炎,神経痛性筋萎縮症,免疫関連神経炎,免疫調整療法

(受付日:2013年6月1日)