臨床神経学

<シンポジウム(4)―17―1>ALSにおけるコミュニケーション障害とその対策:完全閉じ込め状態への挑戦

ALSにおけるコミュニケーション障害の臨床像

長尾 雅裕1)

1)都立神経病院脳神経内科〔〒183-0042 東京都府中市武蔵台2-6-1〕

筋萎縮性側索硬化症(ALS)で眼球運動をふくめすべての随意運動が不可能になると完全閉じ込め状態(totally locked-in state; TLS)となる.TLSでの意思疎通の手段を考慮するため,TLSの臨床像,頭部MRI,SPECT,誘発脳波について検討した.TLSは呼吸器装着までの期間が,約1.5年で他のALSより短かった.頭部MRIでは広範な脳萎縮をみとめ運動系を超えた広範な病変を示した.しかしながらもっとも高度な脳萎縮例でも後頭葉は残り,SPECTでの後頭葉の取り込みの保存,VEPでP100の出現などみとめることから,機能的にも視覚路が保たれることを示唆した.TLSで意思伝達を可能にする手段として視覚路を利用する方法が有望である.
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(臨床神経, 53:1393−1395, 2013)
key words:筋萎縮性側策硬化症,完全閉じ込め状態,人工呼吸器,意思伝達,ブレインマシンインターフェイス

(受付日:2013年6月1日)