臨床神経学

<シンポジウム(2)―3―2>免疫性神経疾患の新しい展開:脳から自律神経障害まで

抗グリシン受容体抗体関連疾患の臨床スペクトラム

飯塚 高浩1), 富永 奈保美1), 金子 淳太郎1)

1)北里大学医学部神経内科学〔〒252-0374 神奈川県相模原市南区北里1-15-1〕

2008年以降,抗グリシン受容体(GlyR)抗体陽性例が報告されている.自験例2例をふくめた28例(男性17例,発症年齢1〜75歳,中央値47歳)を検討した.内訳はPERM17例,典型的Stiff-person症候群(SPS)5例,SPS亜型5例,視神経萎縮1例.9例に抗GAD抗体をみとめ,甲状腺炎5例,糖尿病3例,胸腺腫3例,アジソン病2例を随伴していた.免疫療法あるいは胸腺腫摘出術を受けた21例は改善したが,免疫療法を受けなかった6例中2例は死亡あるいは心停止にいたった.本抗体は脳幹および脊髄のGlyRを抑制し,α運動ニューロンの過剰発火と各種入力刺激に対する過剰反応を誘発させていると推測する.
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(臨床神経, 53:1063−1066, 2013)
key words:グリシン受容体,stiff-person症候群,ミオクローヌス,固縮,驚愕反応

(受付日:2013年5月30日)