臨床神経学

<シンポジウム(2)―1―4>病態仮説に基づくアルツハイマー病治療法開発の現状と展望

酸化ストレス仮説に基づくアルツハイマー病治療法開発の現状と展望

布村 明彦1)

1)山梨大学大学院医学工学総合研究部精神神経医学講座〔〒409-3898 山梨県中央市下河東1110〕

アルツハイマー病(AD)患者の脳のみならず,軽度認知障害患者や成人早期のダウン症候群患者の脳においても酸化修飾産物が増加しており,酸化ストレスはAD病理カスケードの早期変化であると推定されている.これまでに酸化ストレスを標的にしたAD治療薬として,抗酸化作用,ミトコンドリア機能改善作用,抗炎症作用,あるいは金属キレート作用を有する物質が検討されてきた.これらの物質はADの細胞・動物モデルでは顕著な神経保護作用を示すが,臨床試験における有効性は十分に確立されていない.今後の治療戦略として,外来性抗酸化物質投与の限界を考慮し,内因性抗酸化物質の活性化を意図した早期介入が有望かもしれない.
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(臨床神経, 53:1043−1045, 2013)
key words:アルツハイマー病,抗酸化物質,軽度認知障害,酸化ストレス,治療戦略

(受付日:2013年5月30日)