臨床神経学

<シンポジウム(1)―3―3>神経筋疾患における発症前遺伝子診断の現状と課題

臨床遺伝専門医の立場から考える発症前遺伝子診断の現状と課題

吉田 雅幸1)

1)東京医科歯科大学遺伝子診療外来〔〒113-8519 東京都文京区湯島1丁目5-45〕

近年のゲノム解析研究の成果によって,神経難病の原因遺伝子の解明が相次ぎ,疾患の確定診断に大きく貢献しているだけでなく,患者の家系内血縁者の遺伝的リスクについても検討可能な状況が生まれている.しかし,すでに発症している患者の確定診断と,未発症の家系内血縁者の発症前遺伝子診断とでは,患者・家族の精神的ストレスや医療者の対応などの面で大きくことなるため,未発症の家系内血縁者を対象とした発症前遺伝子診断のハードルは低くない.当該患者の受診を端緒とし,遺伝子検査による発端者の確定診断から家族への説明を経て,家族の発症前診断にいたる過程には神経内科医,臨床遺伝専門医,看護職をはじめ多くの医療者がかかわっている.これら様々な局面でわれわれが直面する問題もまた多様である.
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(臨床神経, 53:1006−1008, 2013)
key words:発症前遺伝子診断,遺伝カウンセリング,臨床遺伝専門医

(受付日:2013年5月29日)