臨床神経学

症例報告

重度の嗅覚障害と多発神経根障害を合併した神経サルコイドーシスの1例

岡村 穏1), 鈴木 圭輔1)*, 国分 則人1), 永島 隆秀1), 中村 利生2), 平田 幸一1)

Corresponding author: 獨協医科大学神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕
1)獨協医科大学神経内科
2)リハビリテーション天草病院脳神経内科

症例は50歳女性である.胸下部の絞扼感,右前腕尺側の異常感覚と右大腿の感覚低下が出現し,約1ヵ月後より嗅覚低下を自覚した.鼻粘膜所見は正常であり,嗅覚検査結果より,嗅粘膜より中枢の嗅覚障害が示唆された.頸・胸・腰髄領域の髄節性感覚障害は臨床的・電気生理学的に多発神経根障害と考えられた.頭部,脊髄MRIでは異常はなかった.髄液検査では単核球優位の細胞増多をみとめた.血清ACE値の上昇,胸部CT上肺門リンパ節腫大,非乾酪性肉芽腫の組織診断をえて,サルコイドーシスと診断した.メチルプレドニゾロンパルス療法により,嗅覚障害,感覚障害は改善した.嗅覚障害の鑑別として神経サルコイドーシスを念頭に置く必要がある.
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(臨床神経, 53:821−826, 2013)
key words:神経サルコイドーシス,嗅覚障害,多発神経根障害

(受付日:2013年3月22日)