臨床神経学

<教育講演(1)―3>

自己免疫性介在性脳炎・脳症の診断・治療スキーム

高橋 幸利

国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター〔〒420―8688 静岡市葵区漆山886〕

感染などにともなう免疫反応によって脳炎症状がおこる2次性脳炎(脳症)には,自然免疫が関与するものと,獲得免疫が関与するものが存在する.後者の内で細胞表面抗原に対する自己抗体の関与する脳炎では比較的予後が良いとされる.抗NMDA 型Glutamate receptor(GluR)抗体の関与する脳炎は,小児から40歳までくらいの成人に多く,辺縁系症状で発病,抗体がNMDA 型GluRの内在化をおこし,NMDA型GluR拮抗作用―機能抑制をもたらし,脳炎症状を起こすと考えられている.抗voltage-gated potassium channel(VGKC)抗体の関与する脳炎には抗Leucine-rich glioma-inactivated 1(LGI1)抗体および抗contactin-associate protein(CASPR)2抗体による脳炎があるが,男性に多い.α-enolaseのN末に対する抗体(抗NAE抗体)による橋本脳症の臨床特徴は幅広く,抗TPO抗体スクリーニング陽性例では抗NAE抗体による確定診断が必要である.
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(臨床神経, 52:836−839, 2012)
key words:自己免疫介在性脳炎,抗NMDA型GluR抗体,抗VGKC抗体,抗LGI1抗体,抗Caspr 2抗体

(受付日:2012年5月23日)