臨床神経学

症例報告

慢性経過の脳実質障害症候のみを呈した結核性頭蓋硬膜炎

杉田 俊寿, 加藤 大 ,貴林 大吾 ,大中 洋平 ,中島 雅士 ,河村 満

Corresponding author: 昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門〔〒142―8555 東京都品川区旗の台1―5―8〕
昭和大学医学部内科学講座神経内科学部門

症例は約6カ月の経過で進行した不安定歩行,構音障害,書字障害を呈する59歳男性である.軽度の脳脊髄液細胞増多と,頭蓋冠と後頭蓋窩内面の硬膜に限局するMRI造影効果をみとめた.末梢血をもちいたinterferongamma release assay 陽性から結核感染をうたがい,くりかえし施行したPCRで脳脊髄液中に結核菌ゲノムが検出された.抗結核薬とステロイド投与にて症状は軽快し,硬膜造影効果も消褪した.本症例の特徴は,頭蓋硬膜炎において通常みられる頭痛や脳神経麻痺を欠き,脳実質障害のみを呈した点にあり,脳実質障害の病態機序は,結核性頭蓋硬膜炎にともなう反応性・非増殖性の脳軟膜・くも膜炎によるものと考えられる.
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(臨床神経, 51:267−270, 2011)
key words:結核性頭蓋硬膜炎,特発性肥厚性硬膜炎,インターフェロンγ応答測定法

(受付日:2010年12月4日)