臨床神経学

短報

帯状疱疹後に不完全型Brown-Séquard症候群を呈した1例

別所 恵, 中嶋 秀人, 伊藤 巧, 北岡 治子

Corresponding author:清恵会病院内科〔〒590-0024 堺市堺区向陵中町4丁2-10〕
清恵会病院内科

症例は87歳女性である.右前側胸部の帯状疱疹自覚2日後に右下肢脱力が出現し歩行不能になった.右側下肢の錐体路徴候と左側T6レベル以下の温痛覚低下をみとめたが,深部感覚障害をみとめなかった.髄液の細胞数増多と蛋白上昇,髄液と血清の水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)抗体価上昇をみとめた.脊髄MRIT2強調画像ではT2レベル胸髄右側前半部に高信号病変をみとめた.VZVによる脊髄炎と考えアシクロビルとステロイドの併用治療をおこなったが,筋力の改善は乏しく残存した.本例は不完全型Brown-Séquard症候群を呈し,後脊髄動脈領域である脊髄後索が回避されたことからVZVによる血管炎が原因である可能性が考えられた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (493K)

(臨床神経, 50:175−177, 2010)
key words:Brown-Séquard症候群, 帯状疱疹, 水痘・帯状疱疹ウイルス, 血管炎, 脊髄炎

(受付日:2009年10月13日)